偉人伝 ~伊勢を想う人々~

古くから日本人を魅了してきた伊勢という町。その繁栄は多くの偉人たちによって支えられてきました。
ここでは、知られざる偉人たちにスポットを当て、この町の魅力を再発見していきます。

江戸時代の人気女流作家
荒木田麗女

2020.05.15

よほどの文学好きか、地元の歴史好きでなければおそらく彼女の名前は知らないでしょう。しかし、江戸中期の知識層には、広く知られていた女性です。松坂の小津、津の川喜田といった県内(現在の)屈指の豪商たちが、彼女の本をいち早く読みたがっていました。本居宣長をやり込め、流麗な文体の小説を次々と世に送り出す人気作家だったのです。

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2020.05.15

プライドが高くて、負けず嫌い、おまけに頑固な女流作家。江戸時代にほんとうにそんな女性がいたとは。それもこの伊勢という土地に…。

地元の郷土史家による伊勢郷土史会が発行する会誌『伊勢郷土史草』。第32〜36号まで35枚もの麗女の書簡が特集されている。
川喜田半泥子の作品を中心に所蔵する石水博物館に残されている麗女の書簡。当時の川喜田家13代当主に宛てられたもの。(一部)
1915年(大正4年)出版『徳川時代女流文学 麗女小説集』(冨山房)に収められた麗女の俳句懐紙。
麗女の研究書『荒木田麗女の研究』(雲岡 梓著・和泉書院)
伊勢市八日市場の住宅街に立つ麗女の居宅跡の碑。慶徳は嫁ぎ先の姓。

江戸時代といえば、女性は学問をさせてもらえず、良妻賢母となることを人生最大の目的として夫や子供に尽くすのが当たり前と考えられていた時代。社会の前面にその名を残すのは、将軍の母や娘、嫁といった雲上人ばかり。しかしその頃、この伊勢の町には巷を賑わせる一人の女性がいたのです。連歌師であり、国史作家であり、小説家として知られる荒木田麗女。彼女の作品は、当時の書物好きの間ではとても人気だったようで、貸し借りについての書簡がたくさん残されています。版木出版がされない限りは、自ら書写するしかない時代に、多くの人々の手に渡り、話題となる小説を書きました。今で言うベストセラー作家というところ。彼女は、本居宣長との論争のせいで、ちょっといけ好かない女性像を押し付けられているのですが、果たして本当はどんな女性なのでしょうか。

江戸時代の人気女流作家
荒木田麗女

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