お伊勢さんエッセイ

「遠くにいてしょっちゅう伊勢には行けないけれど、その様子は常に気になる」というお伊勢さんファンのみなさん。
毎月1日、朔日参りの風景と伊勢神宮をさらに深く知るためのお話をお届けします。

皇學館大学名誉教授・櫻井治男先生による
お伊勢さんエッセイ③
伊勢はいま 風雨を祈る 五月かな

2020.05.01

5月14日、神宮では「風日祈祭」が行われます。風雨の災いなきことを祈るこの行事にまつわる話のほか、薫風にかかわる景物や伊勢の霊妙な風のことなどについてお伝えします。

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2020.05.01

若葉とツバメのさえずり〜皐月・朔日まいり

慶光院のあたりからのぞむ、おはらい町の通り。
普段は観光客で向こうまで見渡せないけど…。
今月は楽しみな朔日餅もお休み。
ツバメだけが元気。でもちょっと戸惑っているかな?
人より絶対にツバメの数のほうが多い。こんな参道、初めて。
宇治橋の上も、こんなにひっそり。
ここからの景色は、いつもと変わらないけれど…。
この静けさは、なんだろう。神さまがなにかを伝えようとしているようにも感じます。
御手洗場の五十鈴川。こんなに緑が美しいのに、大勢の方に見てもらえないのはほんとに残念。
神楽殿も特別参拝もお休み。
…それでも、日々参道を清めてくださっている人々の営みは変わらず。一日一日を大切にしなければならない、小さなことこそ大切だと気づかされます。
ご正宮前に誰もいないなんて、信じられない!
いつもは行列している荒祭宮も、今朝はこんな感じでした。
心に勇気をくれる朔日の朝日。どうぞ私達のアフターコロナを見守ってください。
風の音、鳥の声…自然が力を与えてくれる気がします。

 山の若葉が美しいこの季節。本当なら伊勢は日本中から、いや世界各国からお客さんを迎えているはずでした。しかし、病の猛威を断つための緊急事態宣言。

 地元のものとして、みなさんの代参というつもりで、お参りに行ってきました。

 静まり返ったおはらい町。ツバメのさえずりだけが楽しげに響いています。でも、きっと彼らも戸惑っているでしょうね。いつもの年と様子が違うぞ、って。今年産まれた雛は、来年びっくりするんじゃないでしょうか。そうなってほしいものです。

 内宮近くにお住まいの方が、(こんなに人がいないのは)まるで戦争直後のようだ、とおっしゃったそうです。

 でも、まだ食べるものの心配をしなくてもよいから・・・、と。けれども、このまま長引くと、食べるものの心配をしなければならない人も出てくるでしょう。考えると暗澹とした気分になりますが、気持ちを奮い立たせて、神様と向かい合いました。

 健やかで平和ないつもの日々が戻りますように。

 普段と変わらない田園風景や山々の様子が妙に眩しく感じます。(編集部・C)

 

皇學館大学名誉教授・櫻井治男先生による
お伊勢さんエッセイ③
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